大衆演劇に出会ったのは、大学に大衆演劇サークルがあったので興味本位で足を踏み入れたことです。

最初は大衆演劇とはどのようなものかもわからず、ただの時代劇と思っていましたが、入り込むうちにさらなる魅力に取りつかれてしまい、テレビで見る時代劇とは全く別物だという認識に変わっていきました。

また、歌舞伎とも全然違う独特の雰囲気や、その時々の趣向に合わせた化粧、劇団によって違うお芝居の雰囲気、そして劇団で全国をどさ回りして暮らす劇団員たちに魅力を感じました。

その大衆演劇についてご紹介したいと思います。

大衆演劇とは

大衆演劇とは、一言でいえば歌舞伎と時代劇を足して2で割ったような演劇です。特徴としては、お客さんとの距離が非常に近く、お客さんの反応によってお芝居が変わっていったり、その時々のアドリブによってお客さんに楽しんでもらいます。

毎日日替わりで、昼の部と夜の部のお芝居も違います。劇団は全国に何百とあり、大衆劇場・芝居小屋、スーパー銭湯などで約3時間の公演をします。

その3時間というのは、第一部顔見世ショー(舞踊ショーですが、劇場によっては省くこともあります)、第二部お芝居、第三部舞踊ショーの3部だての構造になっています。

劇団員はみんな同じ屋根の下で家族のように時を過ごします。

お客さんはお気に入りの俳優さんを見つけて、舞踊ショーの間にご祝儀を包みます。

劇団によって違う華やかさ、妖艶さ、真面目さなど全然違うので、それを楽しみに劇場へ通い、元気をもらいます。

劇団とお客さんの距離が非常に近いところが好き

一番の魅力は、劇団とお客さんの距離が非常に近いところです。

お芝居中にアドリブでお客さんに話しかけたり、茶化したり、劇団内の座員の秘密をばらしたりすることもあり、また、座長はよく劇団員に無茶ぶりをすることが多いのですが、それに対して必死にもがき照れながら対応する劇団員にも非常に愛着が沸いておもしろかったり、その時々のボケに対して柔軟に対応したりなど、お芝居中のアドリブによってお客さんは楽しんで元気をもらいます。

というのも、お芝居には台本がないのです。

お芝居にはだいたい台本があって、こう言われたらこう返すというセリフの流れが決まっているのですが、大衆演劇は「口だて稽古」と言って、座長や副座長などお芝居を何度も何度もやりつくしていて知っている座員が劇団員を集めてお芝居の内容、誰がこのセリフを言って、ここではける、などを話しながら劇団員に伝えていきます。

劇団員は、それをレコーダーなどに記録させて、解散した後にレコーダーを聞いて全体の流れやせりふを暗記します。大事なところだけ練習して、次の日には本番!という感じです。それでお芝居が成り立つのですからすごいです。

また、セリフを忘れてもほかの座員がカバーしてくれるので、家族として暮らしている劇団員たちは、本当に団結力でできているのだと感心します。

若い人が少ない、観に来にくいのが難点

大衆演劇を観に来る人は、年配の方が多いです。

最近では早乙女太一さんや梅沢富美男さんで若い方にもだんだんと知れ渡るようになってきたのは確かですが、まだまだ若い方の参入が乏しい世界です。

また、大衆演劇、時代劇と聞くとなかなか若い方々に定着しにくく、興味をあまり持ってもらえない世界なので、すごく残念に思います。

お客さんも常連さんがほとんどなので、若い方が一人で観に行くと多少浮いてしまうということもあり、観に行きづらいかもしれません。慣れれば平気なのですが、その慣れるまでの参入という砦が若い方々を遠ざけてしまっているのかもしれませんね。

その他、時代劇はお年寄りが観るものであったり、時代劇といえば演歌なんでしょう?と固定観念が強く、せっかくの古典芸能であっても近づきづらい印象があることが残念です。

劇団によって魅力が全然違う!

その他の魅力については、たくさんあります。

最近の大衆演劇では、劇団によって魅力が全然違います。

古典芸能という部分を意識しつつ、新しいものをどんどん取り入れている傾向があります。例えば、男物のいなせや女物の島田などといった鬘にもメッシュを入れたりエクステをつけたりして、今どきのおしゃれな鬘にしてみたり、着物も古典的な柄のものもあれば、スパンコールや花などをあしらった派手なもの、フード付きの着物、ドレスっぽい着物など、かなりお洒落です。

化粧に関しても劇団によって味が違います。

舞踊ショーになるとその劇団の個性が一気に飛び立ち、その世界に入ることになります。

曲も演歌から洋楽、ロックまで幅広く、着物や洋服を着てノリノリで踊ったりもします。

本当に多彩で、一度大衆演劇の世界に踏み込むと、印象をがらりと打ち崩されること間違いなしです。

その他、大衆演劇には「送り出し」というものがあります。

それは何かというと、公演がすべて終わってお客さんが帰る前にいち早く劇場外に出てお見送りをするのです。お客さんは劇団員の方全員と話したり握手をして写真を撮ったりすることができます。テレビで観てうっとりするというものではなく、実際に大好きなお気に入りの座員さんと話せるのです。

座員さんも、よく来るお客さんは顔と名前を憶えてくれたりします。「また来たね」「おばあちゃん、足腰大丈夫?」「この前の○○美味しかったよー、ありがとう」など、慣れるとお客さんというよりも身内や友達のようになります。

大衆演劇がきっかけで、元気になって、通っているうちに病気が良くなってきたから、この劇団にはすごく感謝してる。だから、ずっと応援するんだ、というご年配の方もいらっしゃいました。

観に行けば元気をもらえる、それが大衆演劇なのかもしれません。

まとめ

大衆演劇はまだまだよくは知られていない演劇ですが、昔の古典を大事にしつつも新しいものもどんどん取り入れていっています。お客さんとの距離感を非常に大事にしているので、自分がその世界に入り込んだような気分になります。

劇団によってお芝居も舞踊も全く趣向が違い、魅力も全く違います。またアドリブによるお芝居のつながりは滑稽であまり見ないものですが、非常に面白いです。

劇場も全国にあり、ほぼ毎日公演しているので、劇団員にはいつでも会えます。距離がここまで近い演劇は、この大衆演劇くらいではないでしょうか。