私のおばあちゃんはお能が大好きでした。

小さい頃から、おばあちゃんに連れられて、お能を見ていたのですが、何がなんだか分からず、上演中に爆睡していました。中学生頃になると、お能を祖母と見る事もなくなり、疎遠になってしまいました。

再びお能と触れる機会が訪れたのは、高校生の時です。それは、学校の芸術鑑賞会でした。その時見た『羽衣』という演目に衝撃を受けました。重い空気と気迫、そして主役である天女の美しく、私はお能の虜になりました。

お能は、日本の伝統的芸術であるのに、多くの日本人が知りません。お能って何?難しそうだから興味ない…と思われがちな能の魅力を簡単にお伝えします!

能楽とは?

お能とは、日本で一番最初にユネスコ世界無形文化遺産に登録されたアートです。

また、歌舞伎よりも歴史が古いのです。お能より雅楽の方が古いのではと思われるのですが、雅楽が大成してから現在までに継承者が一度途絶えてしまっているので、お能が実は一度も途絶えずに現在まで続いてきた伝統芸能なのです。700年もの歴史があります。

名家は、歴代の天皇や、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康などに仕えていたそうです。700年も続くということは、それだけ魅力があるという事なのではないかと私は思っています。

お能を現代のものに置き換えると、ミュージカルです。謡って、舞って、演じるものです。

ただ、謡ってる言葉が昔の言葉なので、とても難しく思ってしまいます。言葉は分からなくとも、空気感や、能独特のリズムメロディーを楽しむことを沢山の人に知ってもらいたいなと思うばかりです。

豪華な衣装、能面が魅力

お能の一番の魅力は、豪華な衣装、能面を使うというところです。

豪華な衣装というのはこれも昔からあったもので、例えば、狩衣、長絹、唐織、半切などがあります。中には金箔が全面に散らしてあるものや、刺繍が細かく施されているものがあります。

この能の衣装を装束というそうです。装束も代々受け継がれてきたものがあり、古いものは、江戸時代のものもあるようです。

ただ、布は傷みやすく、古いものは生地がよわっていて、よっぽどのことが無い限り使わないそうです。現代のどんなミュージカルの衣装より価値の高い代物でしょう。

装束を纏った人の美しさに能の世界に引き込まれる

松が描かれた檜の舞台に、その装束を纏った役の人が立つと、美しくお能の世界に引き込まれます。

装束の模様などもとても綺麗なのですが、舞台上ではその装束の着付けの美しさが際立ちます。

高貴な女性の役の時は、品よく着付けられ、猛々しい神様の役の時は強そうに、かっこよく着付けられます。能楽師の方が着付けているそうですが、その器用なことに驚きます。

若者にとっては難しい芸能

お能の最大の問題は難しい、眠くなってしまうということです。話されている言葉は昔の言葉ですし、動き、舞も抽象的で見ている途中で飽きてしまうかもしれません

。話されている言葉を理解する為には、事前に勉強したり、解説を読む事が必要になります。また、ほとんどの演目の音楽のテンポがとてもゆっくりです。能楽堂の席もゆったりしていて、気づいたらウトウトしてしまいます。

お能を見に行くと、分かりますが、お客さんの年代層は60代〜80代が最も多いように思います。

もともと、お能は大衆向けに作られておらず、殿様や天皇の前でしか披露していなかった為に、ほとんどの人、特に若者に理解されません。

若者にとっては、何を言っているのかよくわからない能楽を見に行くのに、なかなか高いチケットを買う気にはならないのでしょう。

能面の生々しい表情が魅力

装束と共にお能に欠かせないもの、それは能面です。一番有名な能面は、般若でしょうか。「はんにゃ」というお笑い芸人もいました。

能が大成した時から残る700年の歴史がある能面もあるそうで…売ったらいくらになるんだろう、とか考えてしまいます。

能面の魅力は、生々しい表情です。遠くからでは見えないのですが、細かく毛の一本一本が描かれ、同じ種類の能面でも表情が変わってきます。

役者さんは、その都度役に合い、自分に似合う能面を選ぶそうです。

役者にとって能面は最も大切

能楽師(役者)にとって最も大切にされるのは能面です。能面をつけるときは必ず拝をするぐらい大切です。

その能面は、ただ展示してあるものを見ても美しいのですが、舞台上で人がつけた時にこそ生きます。

能面が下を向くと悲しみ、上を向くと笑い、笑っているのにどこか悲しそうで、ただ笑っているのにどこか蔑んだ目をしていたり、表情が沢山あります。

よく、無表情の人のことを「能面みたいな顔」と表現したりしますが、能面は本当なら沢山の表情を持つものなのです。

能を見るお客さんの想像力次第で色々な表情が見れる

なぜ、表情が固定されているのに、その役のいろんな気持ちが能面に出てくるのは、能を見るお客さんがそういう風に想像する為です

能は、場面転換によって背景を変えたりしませんし、能面も表情を変えません。抽象的な部分があります。

現代流行っているものは全て分かりやすく、単純です。お能の良さは、見る側がみんな違う解釈をして、想像力を働かせて世界を広げて自分の世界を作る事ができる点です。

また、お能の良さは他にもあります。例えば言葉の美しさです。今の人たちは、綺麗な景色を見てただ、美しいと言う人がほとんどでしょう。でもお能の言い回しではそこに感情を載せて、お客さんの気持ちを能の世界に引き込みます。お能の言葉を知ると、本当の日本語の使い方はこうなのか!と納得させられます。

まずは興味を持って欲しい

お能は、理解し難い、分からない、興味ないと思われてしまいますが、是非興味を持とうと、分かろうとしてほしいと思います。なぜなら、現代の日本人は皆何もしなくては分からないものだからです。

オリンピックも近くなって来て、世界が東京、日本に目を向けています。そんな中で、日本人が日本の文化を知らなかくて、これほど恥ずかしいことはありません。

能の魅力を知り、感じ、想像して、歴史と700年続いてきた理由を実感してほしいと思います。