実家が古い4軒長屋で、ずっと普通の一戸建てに憧れていました。小学生の頃は新聞に入っていた折り込みの新築戸建てを切り抜いてノートに貼り、なぜか自分も家の絵を模写していました。

新しい家、フローリングの家、廊下のある家、壁がクロスの家に焦がれ続けた思春期でした。

大人になり家族でモデルハウスを購入し、生まれて初めてのフローリング、クロス、吹き抜け、木製のドア、洗面所がある家に引っ越して天にも昇る気持ちでした。

その家を購入する際にたくさんの不動産のサイトを見て回り、間取りや外観を食い入るように見て、自分がその間取りの中で動いている、生活しているのを想像すると楽しくて止まりませんでした。

その頃から、自分にとって間取りがとても奥行きのある楽しい世界だと思うようになりました。

間取り図が好きな理由

これから紹介するのは間取り図です。物件情報で絶対に出てくるあの間取りです。興味のない人にとってはただの平面図でしかありませんが、私にとって間取りとは「新しい世界」「新しい自分」です。

間取りの中では私は貧乏な下宿生で親の仕送りのおかげでやっと1kの文化住宅に住むことができる身分だったり、または超高層タワーマンションの角部屋で東南に面したルーフバルコニーから夜景を眺めることもできるセレブだったり、はたまた温かな家庭を築いて庭付き一戸建ての注文住宅を建てた新興住宅街に住む絵に描いたような普通の幸せな家族だったりと、色んな自分になれるのです。妄想が止まりません。

一見素っ気ない長方形だったり真四角だったりする図形を真上から眺め、ここに玄関があってここにトイレがあってここにキッチンがある、と眺めていくのが新生活を始めるあのワクワク感を身体いっぱいに感じることが出来てすごく気分が高揚するのです。

自分が生活しているのを想像して楽しめるのが魅力

その間取りの中で自分が生活しているのを想像して楽しめる、というのが一番の魅力です。

既にある間取り図の中では、決められたパースの中で自分の手持ちの家具をどう置くか、キッチンの形状によって冷蔵庫はどこに置くか、窓がここにあるならテレビはどこに置くべきか、など頭の中でシミュレーションし、ああでもないこうでもないと模様替えを繰り返すのが楽しいです。

自分で間取りを作る場合は、もっと夢が広がります。

キッチンから出てすぐに料理が置けるようダイニングはキッチンの真横に位置して流行りの対面カウンターはいらないやとか、洗面所の中に収納は絶対必要だからここを削ってとか、憧れのパントリーはここに配置してとか、廊下がある分部屋が狭くなるから廊下はなくして正方形のホールにしよう!そこから各部屋に行けるようにしようとか、自分の理想とする家族の形、生活の動線を全てぶち込むことができるのです。

特に鳥肌が立つほど好きな配置は、キッチンを中心とした水回りの回遊型です。キッチンにいながら洗濯終了の合図が聞こえる、お風呂掃除にすぐ行ける、外から帰ってきた人はLDKに入る前に洗面で手を洗ったり浴室で汗を流せる、来客中はリビングを通らずトイレや他の部屋に移動でき、戻ってくるときもキッチンから戻れるという便利さに非常に感動します。

図面上ではそっけない6帖、4.5帖、LDKなどの表記全てに、自分の生活スタイルを織り込んでいくのです。そうすると脳内では自分がこの間取りの中で生き生きと生活し、家族と会話し、洗濯を干しているのです。コンセントはここにあったら扇風機とドライヤー両使いできるとか、冬はコタツでゲームするからここにコンセント追加しようとか、リアルな自分の生活が間取りの中でどんどんと広がっていくのを見る(脳内で)のがとても楽しいのです。

興味のない人にはなかなか魅力が伝わらない

間取りの本というものが出ているので、間取り図を見るのが好きな人は少なくはないと思っています。

また、「こんなヘンな間取りがある!」というおあそびの本などもあり、そういうのを楽しめる人は間取りの中に自分を放り込んで俯瞰して見ることができると思いますが、ただの図形にしか見えない人も多数いると思います。

私にとっては子供に与えられたまっさらな自由帳と同じ、未知の世界が広がるキャンバスですが、興味のない人には「何部屋あるのか」「実際の広さはどれくらいか」「日当たりはどれくらいか」という情報の紙切れでしかありません。

これは価値観の違いなので、おススメしたところでその魅力に気づいてもらえるかと言えば難しいと思います。

間取り図を見てると、法則が見えてくる

間取り図をいくつも見ているうちに、何となくの法則性というものが見えてきます。

マンションに多いのですが、やはりマンションはどこでも似たような間取りになっています。よほどのデザイナーズマンションでもないかぎり、玄関を入って廊下があり、廊下のサイドに個室と洗面、浴室、トイレがあり、突き当たりのドアを開けばLDK、その奥にバルコニーとなっています。

ではなぜどのマンションも似たような間取りになるのか?それは、マンションにとってこの間取りが一番効率が良いからではないでしょうか。マンションの間取りは、生活動線、家事動線の目線から見ると最高の間取りなのです。

最も効率が良いと感じるのは、トイレと洗面の近さ、そして洗濯物です。

お風呂に入る前に、最悪裸のままでも向かいもしくは隣にあるトイレで用を足し、そのままお風呂に入ることができるという便利さ。

また、洗濯物を取り出しそのまま真っ直ぐ進めばバルコニーがあるというのは一般的な一戸建てではあまりない構造です。一戸建てでも3階建ての2階リビングでは洗濯物とバルコニーが同じ階のこともありますが、個室が1階と3階に分かれておりそれぞれが2階まで降りたり上がったりしなければなりません。

1つのフロアで生活全てが賄えるというのは、マンションか平屋でしか叶えられないのです。

一戸建ての間取りは、それこそひな形のようなものもあれば、注文住宅の場合はそこに住む人が考えた独自の間取りが存在します。それに出会った時、この家の人はどういう生活スタイルでどういう考えがありこの間取りにしたのだろうと考えるのがとても楽しいのです。

オリジナリティある間取りには、一般的と言われる間取りにはない、その人独自の理想と便利性が詰め込まれており、非常に興味深いところであります。

まとめ

私にとって間取り図とは、現実世界とは違う自分、現実の家とは違う家に住めるという憧れかつファンタジーの世界です。実際には主たるひとつの家でしか生活を送れない私が、想像の世界では間取り図の数だけ無限の生活パターンがあり、様々な人間になれるのです。

そんな自分の生活を客観的に真上から眺められるというのは最高に楽しい遊びでもあり、これから家を建てる場合には非常に貴重な経験にもなります。

四角い空間にいる小さな自分がちょこちょこ動いているのを眺めることができる、間取り図という名の映写機なのです。